インド映画夜話

バーフバリ 王の凱旋 (Baahubali 2: The Conclusion) 2017年 141分(オリジナルは171分。タミル版は168分)
主演 プラバース & アヌーシュカ・シェッティ他
監督/脚本 S・S・ラージャマウリ
"王を称えよ!"


ヒンディー語版トレイラー


 カッタッパの語るバーフバリの伝説は続く…。
 カーラケーヤとの大戦争の後、正式なマヒーシュマティ王国王位継承者となったバーフバリは、国母シヴァガーミーの命で諸国見聞の旅に出発。カッタッパを連れて密かに北方へと向かう彼に、クンタラ王国を襲う蛮族の脅威が迫る。その彼の前に現れたのは、その武勇で敵を退け、国民や部下を救う勇武なるクンタラ王の妹デーヴァセーナであった。

 デーヴァセーナに惚れ込んだバーフバリは、密かに彼女の兄クマーラ・ヴァルマーに近づき部下として仕えながら王妹の様子を探っていく。
 その頃、バーフバリの近況を聞いたバッラーラデーヴァとその父ビジャラデーヴァは、一計を案じ「クンタラ王家の娘デーヴァセーナをバッラーラデーヴァの婚約者にする」ことをシヴァガーミー女王の誓約として受け取ることに成功する。バーフバリたちの運命を変えるマヒーシュマティ王国の使者がクンタラ王城へ入城する一方で、蛮族たちの猛攻が王宮に迫り来る…!!


挿入歌 Saahore Baahubali


 世界中で大ヒットした「バーフバリ 伝説誕生(Baahubali: The Beginning)」の完結編となるテルグ語(*1)映画大作!!

 テルグ語オリジナルの他、同時制作でタミル語(*2)版も作られて封切られ、ヒンディー語(*3)吹替版、マラヤーラム語(*4)吹替版、ドイツ語吹替版、フランス語吹替版、英語吹替版も世界各地で公開。公開開始10日で1000カロール(=100億ルピー)を叩き出し、軽々とインド映画史上最高売り上げを記録した映画である(*5)。
 日本では、2017年末に一般公開!

 前作に輪をかけて、「ありえねーー!!!」を連発したくなるケレン味アクションと極彩色の乱舞、壮大な史劇大戦争を描くファンタジー大作。映画冒頭から、映画史上最高にかっこいい象への騎乗シーンを見せてくれる、その歌舞伎的画面作りが最高でありますことよ!
 基本的には、前作と同じ「冒険→ロマンス→戦い→冒険→大戦争」なシンクロ展開ながら、前作以上に「マハーバーラタ」のオマージュ色が強まっていく物語構造の他、明らかに「ロード・オブ・ザ・リング」他の映画パロディ戦闘シーンをぶち込んできつつ、その色彩効果や画面密度は間違いなくインド式美学に則る完成度。大作映画の名に恥じない、映画としての豪華さに満足も大満足してしまうくらい圧倒されますゼ!! 前作で蒔かれた、映像的伏線をしっかりシンクロ回収しつつ親子2代(*6)の壮大な復讐劇を劇的に盛り上げていく様の、まあトンデモなさよ。
 それにしても、クンタラ王城攻防戦で見せるバーフバリの八面六臂な活躍ぶりなんて、もう「ロード・オブ・ザ・リング」のエルフとドワーフとエントと魔法使いと騎馬の民を全部一人で引き受けてる超絶アクション。主人公補正どんだけーってなもんですよ!!w

 物語は、ほぼ先代バーフバリを中心に描かれていて、その25年後のシブドゥ編が後半の決着編になるとはいえほぼ付け足しみたいな感じなのが、ちょっと消化不良気味ではある。
 とはいえ、前作から出てきていた登場人物の過去の姿が出揃うクンタラ王国編において、25年の歳月を表現するように役者の体型から化粧から大きく変化をつけているのはサスガというか「よくそこまでシルエットが変わるなあ」という役者根性が見えてきて、ため息ものですわ。
 まあ、前作で活躍していたアヴァンティカ役のタマンナーの活躍を楽しみにしていた身としては、「あ、この映画のヒロインってアヌーシュカ・シェッティの方だったのね」と肩透かしを食らった感じではあるけれど、アヌーシュカ演じるデーヴァセーナ女王の過去編のお美しさ、25年後編のふてぶてしさ、どちらもこれでもかと"強いぜオーラ"全開なお姿がトンでもね!!

 前作よりも、より「マハーバーラタ」要素が強くなっていく先代王の物語のために、インド文化の基礎教養でもある叙事詩を読んでいくのも一興かとは思うけど、そうはいっても「マハーバーラタ」は長すぎて日本語で読めるのが抄訳版しかないのがね…(*7)。「ラーマーヤナ」や「イリアス」「オデュッセイア」が読める日本なんだから、「マハーバーラタ」もなんとかしておくれー!!

 「戦争ものって、泥臭いし血生臭すぎて嫌いなんだよねー」と言うおかんは、前作「伝説誕生」はブーブー言いつつ「スゴい画面だね!」と楽しんでたなあ、と思ってたら、今度は「さっさと後編を見せろ」とうるさく言うので見せたら「いやー、戦争してるとこはどーでもいいけど、このあり得ない歌舞伎アクションや、極彩色の色彩計画がしっかりしてるから、綺麗で見入っちゃうわー」とかゆーておりました。やーいハマってやんのー。面白いでしょ、面白いでしょ!ネェネェ(*'д`)σ))

挿入歌 Hamsa Naava

*前作の滝登り映像に匹敵する、色彩と歌舞伎的ハッタリの洪水映像の乱舞は、化物帆船での川上り映像ダヨ!(ああ、どっかで見たことあるような映画愛溢れる映像効果の乱舞よ…)


受賞歴
2017 CNN-IBN Indian of the Year 特別業績賞
2017 中国 Macau International Movie Festival 撮影賞(センティル・クマール)
2018 米国 Academy of Science Fiction, Fantasy & Horror Film サターン国際映画作品賞
2018 Ananda Vikatan Cinema Awards 助演男優賞(サティヤラージ)
2018 Filmfare Awards South テルグ語映画作詞賞(M・M・ケーラヴァニ / Dandalayya)・テルグ語映画音楽アルバム賞(M・M・ケーラヴァニ)・テルグ語映画助演男優賞(ラーナー/ダッグバーティー)・テルグ語映画助演女優賞(ラムヤー・クリシュナ)・テルグ語映画監督賞・テルグ語映画作品賞・テルグ語映画撮影賞(センティル・クマール)・テルグ語映画デザイン賞(サブー・サイリル)
2018 National Film Awards 驚異的人気娯楽作品銀蓮賞・アクション賞(キング・ソロモン & リー・ウィッタカー & ケッチャ・カーンパークデー)
2018 Zee Cine Awards 特別賞


「バーフバリ 王の凱旋」を一言で斬る!
・クンタラから贈られたデーヴァセーナの肖像画、各王宮に飾られている王家の肖像画もふくめて、なんてルネサンス以後の描写力なんだ…w

2017.12.29.

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*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*3 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*4 南インド ケーララ州の公用語。
*5 その後、時をおかず興行収入記録ではヒンディー語映画「Dangal(ダンガル)」に抜かれてしまう…けれども、インド国内売り上げでいえば圧倒的に本作の方が上になるそう。
*6 シヴァガーミー女王も含めて3代?
*7 原典訳もあるけど大冊シリーズだったり、途中で刊行凍結されてる文庫版だしで…そのボリューム、大変な仕事量ですもんね…。